公演から時間は経っていますが、それぞれが過ごす日々の中で、作品のこと、時間、場所を振り返ってみて欲しいなと思い、書く事をお願いしていました。ダンサーとして参加してくれた藏元徹平くんのテキストです。
玲奈さん
おはようございます。 遅くなってすみません、テキスト書けました… 土曜日に大学卒業しまして、昨日引越してきました。 古いアパートなので、人が住んでた感がすごいです。2部屋あるので、1部屋は創作に使えたらなぁと思ってます。周りはすごくのどかです。周りには田んぼと教会と卵の自動販売機があります。とはいっても神戸も大阪も京都もすぐ行けるところなので便利です。また関西くるときは寄ってください。
以下、テキストです
玲奈さんからテキストを書くように言われ、だいぶ時間が経ってしまいました。身体で感じたことや頭の中に浮かんでいること、記憶を文字に起こすのはこんなに難しいのかと、ギリギリまで残しておいた夏休みの日記状態です。
今回、玲奈さんと出会って数日後に誘われました。 何日か前に出会ったばかりなのにと思いながら、直感も大事にしてる人なんだろうな、これは面白そう、と思い参加しました。
僕は即興からダンスに入りました。知らない人と即興で踊ってから、会話がうまれて知り合う、ということが多かったのですが、玲奈 さんとの出会いもそうだったので、知り合ってすぐの稽古ですが、懐かしい気分を感じていました。
僕は初対面の人と会話するのは苦手な方なのですが、そんな感じで、初めて来た場所に対して緊張することがあります。きょろきょろしたり、浅くなる呼吸を無理やり深くしてみたり、壁を見たりさわったりして慣れていきます。初めて来た場所に話しかけるわけにはいかないので、身体でアプローチしてみるわけです。 人と会う回数が増えれば、その人がわかってきますが、僕は場所に対しても同じようなことを感じます。
公演場所としてお借りしたお家では稽古ができるだけでなく、周辺を歩いたり、そこに住む人とお家でお話ししたり、少しお手伝いしたり、二匹の子猫ちゃんたちと戯れたり、場所と一緒に過ごす時間を持てました。 壁の傷や窓枠の歪み、窓からの景色、ごろごろしてみた時の床の感じや天井の模様、そういったものが自分の身体の中に入ってくると、自分の身体が場所に溶けていく感じがするというか、自分がお家の一部になったような感覚がありました。
最近引っ越しまして、あのお家のように素敵ではないですが、色んな人を長く受け入れて来たであろう古いアパートに住んでいます。襖を閉めても、顔を上げれば閉まってるのに足元を見たら虫が通れるほど開いています。天井は染みだらけで、引越し屋さんと初めて家に入ったら床が一部水浸しでした。そこだけ真っ黒に色が変わってました。 でもそういう歪みとか染みとかを見つけると、此処には人が居たんだなと、仲間入りした気分になります。そして、此処からまた踊りがうまれるような気もしています。生活のなかにも踊りはあるなと思う日々です。
藏元徹平